性理大全書卷之二十二

律呂新書一 律呂本原

変声第七

  • 変宮声四十二(小分六)
  • 変徴声五十六(小分八)

按ずるに、五声の音階では、宮と商、商と角、徴と羽はそれぞれ一律をへだてて並んでいる。角と徴、羽と宮については二律をへだてて並んでいる。
へだたりが一律の場合音節」は和し、へだたりが二律の場合「音節」は遠い。そのため、角声と徴声のあいだにある律のうち徴声に近い律を一つの「声」にあてる。これは徴声より少し低いので〈変徴〉と呼ぶ。羽声と宮声のあいだにある律のうち宮に近いほうの律を一つの「声」にあてる。これは宮声より少し低い(*)ので〈変宮〉と呼ぶ。
〔前章で述べたように〕角声の実数〈六十四〉をそのまま〈三〉で割ると、「一」の余りが生じ(商二十一、余り一)、三分損益の計算が継続できない。五声に〈変徴〉〈変宮〉の二声を加えるためには、この問題を解決しなければならない。
「変声」として加えなければならないものは二つ(宮と徴)である。したがってまず〈一〉を置いてこれに〈三〉を乗じること二度の操作をおこない〈九〉を得る。この〈九〉を、角声の実数〈六十四〉に乗じ「五百七十六」を得る。この数値から三分損益を継続すると、〈変宮〉(三百八十四)と〈変徴〉(五百十二)の二声の正確な数値が得られる。この二つの数値を〈九〉で割り、〔前章で求めた〕五声の実数に追加するのである。〔〈九〉を分母とした場合の〕端数も記して、めやすを明らかにしてある。
〔〈変宮〉の数(三百八十四)から、三分損益によって〕変徴の数〈五百十二〉を得、さらにこれを三分すると、ここで「三分の二」という余りが生じてしまい(商百七十、余り二)、計算が継続できない。これが変声が二つにとどまる理由である。
〈変宮〉と〈変徴〉は、「宮」でありながら宮になれず、「徴」でありながら徴になれない。古人はこれを〈和〉〈繆〉と称した。また、五声の不完全さを補うものとも言った。変声は「正声」ではないので調を構成しない(「変宮調」「変徴調」はない)。

原文

注釈(訳者)

宮より少し低い
原文は「少高於宮」。丘瓊蓀の『宋史樂志校釋』(未見。今,評点本『宋史』〈中華書局〉の「校勘記」による。)は「少下於宮」に改めるべきだとする。これに従った。