性理大全書卷之二十二

律呂新書一 律呂本原

変律第五

  • 黄鐘十七万四千七百六十二(小分四百八十六)
     全、八寸七分八釐一毫六糸二忽(用いない(*)
     半(*)、四寸三分八釐五毫三糸一忽
  • 林鐘十一万六千五百八(小分三百二十四)
     全五寸八分二釐四毫一絲一忽三初
     半二寸八分五釐六毫五絲六初
  • 太簇十五万五千三百四十四(小分四百三十二)
     全七寸八分二毫四絲四忽七初(用いない)
     半三寸八分四釐五毫六絲六忽八初
  • 南呂十万三千五百六十三(小分四十五)
     全五寸二分三釐一毫六絲一初六秒
     半二寸五分六釐七絲四忽五初三秒
  • 姑洗十三万八千八十四(小分六十)
     全七寸一釐二毫二絲一初二秒(用いない)
     半三寸四分五釐一毫一初一秒
  • 應鐘九万二千五十六(小分四十)
     全四寸六分七毫四絲三忽一初四秒(余り三分の一)
     半二寸三分三釐六絲六忽六秒強(用いない)

按ずるに、十二律はすべてそれ自身が〈宮〉となり、五声二変の音階(宮・商・角・変徴・徴・羽・変宮)を形成する。そのうち、黄鐘・林鐘・太簇・南呂・姑洗・應鐘の六律が宮となる場合の音階は完全に正しい。しかし蕤賓・大呂・夷則・夾鐘・無射・仲呂の六律が宮となる場合は、音階の中で黄鐘・林鐘・太簇・南呂・姑洗・應鐘の律を用いると、それらの律はやや低く、調和しない。そのために〈変律〉があるのだ。〈変律〉とは、その音はより正確で、正律より少し高いのである。
しかし仲呂の律〈十三万一千七十二〉まで求めて、これを三で割ると〈二〉という端数が生じ、計算が継続できなかった(*)。〈変律〉の値を算出するには、これをうまく処理しなければならない。
十二律のうちで〈変律〉が必要となるものは六つである。したがってまず〈一〉を立て、それを六回三倍し、〈七百二十九〉という数を得る。この〈七百二十九〉をもって仲呂の実数である〈十三万千七十二〉に乗じ、〈九千五百五十五万千四百八十八〉を得る。これを起点に三分益一を継続し、黄鐘・林鐘・太簇・南呂・姑洗・應鐘の六律を求める。〈七百二十九〉で割り、基本の十二律の数値にあうように換算する。その端数も記して(*)精確を期す。このようにすると数の大小と音の高下は乱れることがないのである。
〈変律應鐘〉の実数〈六千七百十万八千八百六十四〉まで求めると、これを三で割るとまた端数〈一〉が生じ、計算が継続できなくなる。こうして〈変律〉は六つにとどまるのである。
〈変律〉は正律ではないので、それ自身が〈宮〉となることはない。

原文

注釈(訳者)

用いない
〈変律黄鐘〉の正声は、実際の演奏には用いないこと。〈変律黄鐘〉は〈半声〉が使われる。この数値は三分損益の演算のためにある。実際の演奏の調における〈正声〉と〈半声〉の使われ方は「六十調圖」章によって一覧できるようになっている。
全声(正声)の半分の値である。一見すると半分でないようであるが、九進法によっている。
計算が継続できなかった
これについては「十二律之實」章に既出。「至仲呂之實十三萬一千七十二、以三分之不盡二筭、其數不行」(仲呂之實十三萬一千七十二に至って、三を以て之を分かつに二筭を盡くさず、其數行かず)とある。
端数も記して
律数の下にある「小分」を指す。いずれも分母を〈七百二十九〉とした数である。